高専とは技術者を育成する5年制の学校

保護者

息子の友だちが「高専」を志望しているらしいです。高専とは、どういう学校ですか?普通の高校となにが違うのでしょうか。

教室長

高専とは、高等専門学校の略です。高校と同じく中学校を卒業した人が入学できる学校で、大学や専門学校と同じ高等教育機関の1つです。

保護者

どんな特色があるのでしょうか?

教室長

文部科学省のホームページでは、次の5つの特色が挙げられています。

 

① 5年一貫教育
②実験・実習を重視した専門教育
③「ロボットコンテスト(ロボコン)」などの全国大会開催
④卒業生に対する産業界からの高評価
⑤さらに高度な技術教育を受ける専攻科(2年間)がある

保護者

順番に詳しく教えてください。

教室長

まず、高専は、実践的・創造的な技術者を養成することを目的とした高等教育機関で、5年一貫の教育をおこないます。商船学科は5年6ヵ月です。教育課程では、一般科目と専門科目がバランスよく配置されているのが特徴です。

保護者

5年もあると、しっかり勉強ができそうですね。

教室長

高専では、学んだことを応用する能力を身につけるため、理論だけではなく実験・実習に重点が置かれています。卒業研究では、創造性を持った技術者の育成を目指します。

保護者

学科にはどんなものがあるのですか?

教室長

学校ごとに異なりますが、大きくは工業系と商船系に分かれます。工業系は機械工学科、電気工学科、電子制御工学科、情報工学科、物質工学科、建築学科、環境都市工学科などです。商船系は、商船学科です。ほかに経営情報学科、情報デザイン学科、コミュニケーション情報学科、国際流通学科などもあります。

保護者

情報デザインやコミュニケーション情報とか、今の時代に合わせた新しい学科もあるのね。

教室長

高専の生徒さんが、ロボコンなどの全国大会で活躍していることはご存じですか?

保護者

はい、テレビで見たことがあります!学生たちが自分でロボットを開発して、コンテストで戦うのですよね。複雑な動きやユニークなデザインのロボットをつくっていて、感動しました。

教室長

ロボコンのほかにも「プログラミングコンテスト」「デザインコンペティション」「体育大会」など、全国規模で高専生が競う大会が高専では開かれています。

保護者

あれだけの技術力があれば、社会に出ても即戦力になれますね。

教室長

高専の卒業生は、製造業をはじめさまざまな分野で活躍しています。ものづくりをする企業では、卒業生を雇用したいという声が非常に多いのです。

保護者

卒業後にさらに進学する生徒さんもいるのですよね?

教室長

はい。多くの高専には、卒業後さらに2年間、より高度な技術教育をおこなう専攻科があります。専攻科を修了すると、独立行政法人大学評価・学位授与機構の審査を経て、大学学部と同じ「学士」の学位を取得できます。卒業後、大学3年次(場合によっては2年次)への編入学も可能です。

保護者

高専は、全国にどれくらいの数あるのですか?

教室長

全部で57校あります。国立が51校、公立が3校、私立が3校です。

卒業後の進路は就職が約6割、進学が約4割

保護者

高専では、1年生から5年生まで、それぞれどんな勉強をしているんですか?

教室長

1年生は一般教養がメインです。学年が上がっていくと、専門教育の比率が高くなっていきます。卒業生からは、「専門教育では実習が多く、課題やレポートが多くて大変だった」という声も聞かれますね。

保護者

実習をやって終わりではなく、定着のために課題やレポートが多く出されるのですね。

教室長

社会に出たときに、レポートや資料づくりは役立つスキルなので、学生のうちに学べるのはいい機会だと思いますよ。3年次を修了すると「高校卒業資格」が取得できます。4年生になると、自分の専攻する研究室を決めます。5年生になると、卒業研究もしくは卒業論文を作成します。

保護者

卒業研究や卒業論文が認められれば、晴れて卒業ですね!卒業生の何割ぐらいが就職したり、進学したりしますか?

教室長

約6割は就職します。現場で役立つ専門的な技術を身につけているので、産業界を中心に引く手あまたです。就職難と言われた時期でも、高専卒業生の就職率はずっと安定して高い水準にありました。

保護者

それはすごいですね。

教室長

ただし、大卒とは違う(高専卒業時の学位は準学士/短大卒業相当)ので、企業によっては昇進や昇給の面で待遇が異なることもあります。

進学を決める際に考えたい3つのこと

保護者

高専に行くメリットってなんですか?

教室長

5年間、大学受験などもなく、勉強に集中できます。ロボコンなどで本格的にロボットの開発などもできます。学びたい意欲のある生徒さんには、いくらでも勉強できる環境が整っている点がメリットといえるでしょう。特に「ものづくり」の道に進みたいお子さんには、望ましい進路先だと思います。

保護者

受験の状況はどうなっていますか?

教室長

受験日は、一般の公立高校よりも早い2月中旬です。高専に挑戦してみて、不合格の場合は公立高校を受ける生徒さんも多くいます。学科にもよりますが、男女比はだいたい男8:女2のようです。情報系は女子が多く、機械系は少ない傾向があります。

保護者

専門性の高い技術が身につき、就職率もよく、企業で即戦力になれるなんてすごいですね。今の時代を考えると、高専はいいことづくめのように見えます。高専を進路に考えるとき、なにか気をつけたほうがいいことはありますか?

教室長

4つあります。1つは、目的意識や将来の方向性が明確でないお子さんは、逆に進路を狭めてしまうおそれがあることです。ものづくりの道に進みたいかどうか決めかねているという場合は、普通科の高校に進学したほうがいいでしょう。

保護者

なるほど、わかりました。

教室長

2つ目は、進級できない生徒さんも少なくないことです。落第の理由としては、課題の未提出や赤点の再試験を受けないなどが多いようです。

保護者

まじめに授業や課題に取り組めるなら、心配ないということね。

教室長

基本的にはそうですね。卒業生の話では、3年生から4年生に上がるときが1つの岐路になるようです。3年修了時で高専をやめて、進路替えをする生徒さんも一定数いるとのことです。

保護者

3つ目はなんですか?

教室長

学科選びに失敗すると、転科が難しいことです。転科するには、転科試験を受けますが、そのとき転科先の学習内容の範囲が出題されます。つまり、習っていない転科先の科目を、自分で勉強しなくてはならないのです。そうでないと、仮に転科できても授業についていけなくなります。

保護者

専門性が高いがゆえに、方向転換がしにくいのですね。

教室長

4つ目は、人間関係が固定化しやすいことです。クラス替えなしで5年間同じメンバーと過ごすことが多いのです。仲のいい子とは深い関係になれる反面、一度人間関係がこじれると、リセットしにくいかもしれません。

保護者

なるほど。自分の適性や将来の仕事をよく考えて、選ぶことが大切よね。

教室長

高専は就職率のよさなどの理由で、どうしても人気が高くなります。そのため、偏差値は総じて高めです。受験を考えるなら、高専に合わせた受験対策をしっかりやっておきましょう。個別指導塾では、工学系の先生をつけて、高専での専門教育のサポートをすることが可能です。また、高専の4年次以降の学生や卒業生が、個別指導塾の講師として活躍することも少なからずあります。高専ならではの専門教育への考え方がしっかりしているので、生徒さんへの進路に相談に乗るときも深みがあって感心しました。

保護者

ありがとうございました。高専もとても魅力的な選択肢ですね。参考にしてみたいと思います。