高校受験や大学受験における「推薦入試」とは、どのような入試制度なのでしょうか?推薦入試といっても、その種類や実態にはさまざまなものがあります。今回は高校の推薦入試の仕組みに加えて、多様化の進む大学の推薦入試についてもご紹介していきます。保護者の方が受験したときとは様変わりしていますので、ぜひこの機会に現在の状況を確認しておきましょう。
(※本記事は2018年時点の情報です。現在は大学の推薦入試は、学校推薦型選抜となっています。)
学校推薦型選抜の入試制度・概要・対策については、以下の記事でご確認ください。
●【高1・2生必見】学校推薦型選抜とは?今から始めたい推薦入試対策>>
目次
私立高校と公立高校の推薦入試は似て非なるもの
保護者
うちは公立高校を第1志望にしているけど、学校の先生から私立高校の推薦も視野に入れてはどうかと言われていて、現在検討中です。
教室長
そうですね。内申点が志望校の基準に達していれば、推薦入試はぜひ活用してください。
保護者
第1志望が公立なので、できれば公立高校の推薦入試をねらいたいと思っていますが、どうしたらいいでしょうか。
教室長
なるほど。公立高校の場合、一般論として推薦入試は合格率が低く狭き門です。出願できるのは1校のみで、合格した高校に必ず入学することが条件になっています。ご質問のケースですと、公立高校が第1志望ですので、私立高校は「併願推薦(併願優遇)」に出願することになりますね。1月後半から2月の上旬ごろに実施される試験で合格した私立高校を「すべり止め」としてキープしながら第1志望校の一般入試を受けることができます。
保護者
私立高校が第1志望の場合でも同じですか?
教室長
私立高校の推薦入試には1校のみ受けられる「単願推薦」というものもあります。公立の推薦と同じく、合格した場合にはその学校に入学することが大前提になります。他にも12月から1月にかけて「自己推薦」や「スポーツ推薦」などを設けている私立高校もありますが、いずれも内申点などの学力基準を満たしていること、その学校が第1志望校であることなどが条件になっています。
保護者
第1志望校が私立高校だと、自分の得意分野を生かした推薦枠もあるんですね。
保護者
合格のチャンスが増えると考えれば、確かに私立推薦は活用したいですね。
教室長
私立高校の推薦入試の場合、内申点が基準に達していなかったとしても、模擬試験の偏差値などが考慮される場合があります。したがって模擬試験は入試に慣れるための力試しや苦手範囲の発見のためのツールとしての位置づけもありますが、意外なところで使える場面が出てくるということは頭の片隅に入れておきましょう。
大学の推薦入試は高校の推薦入試とどう違うの?
保護者
そういえば、大学入試の推薦入試の一種で、最近「AO入試」(エーオー入試)というものがあると聞きました。
教室長
「AO入試」はアドミッション・オフィス(Admission Office)入試のことですね。高校からの推薦を必要としない場合がほとんどで、自らの希望で出願することのできる入試制度です。自己推薦との違いは、大学が求める学生像と合致しているかどうか、生徒さんの適性を見ながら、受験生自身の個性もしっかりと評価する点です。私立大学だけでなく国公立大学でも広く行われています。学力試験を実施せず、書類選考や面接、小論文といったものだけで合否が決めるケースが多いです。
保護者
自己PRや、大学で勉強したいという熱意が重要なんですね。
保護者
自己PRといっても、どんなところを大学の先生は見ているのかしら。
教室長
AO入試は大学によってさまざまな考え方があり、一概に言えない部分もありますが、大切なポイントは2つあると思います。1つは、自分はここまで学習内容を習得できているという見極めです。大学の専門的な講義やゼミであっても、そのカリキュラムについていけるだけの下地は必要ですよね。実はもう1つが意外に見逃されがちなのですが、わかりますか。
保護者
基本的な知識や技能以外ということですよね。そうだとしたら、きっと本人の気持ちの部分じゃないですか。
教室長
かなりいい線行っていますね。大学の先生は毎年たくさんの学生さんの指導を受け持っているわけですが、やはり大学に入って伸びる生徒さんを預かりたいと考えるものです。そこで、「この生徒さんは大学に入って才能を伸ばせるかな?」という部分にも目を向けているのです。そのために真摯に目の前に課題に取り組めるかどうかをAO入試の課題を通じて考査しています。
保護者
よくAO入試って高校の推薦がいらない分、「お気軽な入試制度」のように言う人もいるけど、実はけっこう大変なのね。ところで、通常の推薦入試はどうなっているのかしら。
教室長
はい。もちろん大学入試には高校からの推薦が必要なものもあります。高校の推薦入試とほぼ同じものが「公募推薦」(公募制推薦)です。一般推薦とも言われるもので、高校からの推薦と、大学が求める出願条件を満たしていれば応募できます。ただし、ゼロから大学で学ぶのではなく、たとえばあらかじめ大学3年レベルの専門知識が必要な場合もあるので、この点はよく確認しておく必要があります。また、大学が指定した特定の高校のみを対象にした「指定校推薦」というものもあります。こちらは主に私立大学を中心に行われている入試で、一部の公立大学にも同様の制度を設けている場合もあります。指定校推薦では、高校ごとに推薦できる人数が決まっていますし、学部などもあらかじめ指定されています。成績や内申点をもとに「校内選抜」が行われることがほとんどです。
保護者
指定校推薦は、まず学校内の選抜に入る必要があるんですね。
教室長
指定校推薦は、人気の高い大学の場合は推薦基準の評定を超えていても、学校内で選ばれなければなりません。評定も基準ギリギリではなく、多少なりとも余裕を持っておきたいところです。高校からの推薦が得られれば、一般的には大学から課される推薦入試自体の合格はほぼ確実と言われています。指定校推薦は、高校受験で言う「単願推薦」と同様に合格した場合、ほかの大学を受験することはできません。また西日本の私立大学など一部の大学では指定校推薦であっても、学力試験を課して、そこで選考する場合もあります。
保護者
「興味のある学部や学科の指定校推薦枠が豊富な学校」という観点から高校を探してみるのも、進路選びのポイントになるかもしれないですね。
教室長
指定校推薦が3年後も継続されている保証はないので、あくまで参考程度ですが、高校入試の際に考慮してもよいかもしれませんね。
保護者
ほかにも、体育や音楽、芸術学部を目指す生徒さんなら、公募推薦のなかでもスポーツや課外活動などの実績が評価される「特別推薦」を選んでみてもいいかもしれないわよ。「自己推薦」「スポーツ推薦」「文化活動推薦(課外活動推薦)」の3つは、国公立大学・私立大学を問わず広く行われているみたいだわ。
推薦入試から一般入試までの流れは?
保護者
あまり考えたくはありませんが、もし推薦入試に落ちてしまった場合はどんな流れになるんですか?
教室長
高校入試は私立推薦、公立推薦、私立一般、公立一般の順に行われるので、推薦入試に落ちてしまっても、高校から合格をいただける機会はまだまだあります。推薦入試が不合格の場合、2月中旬に行われる私立一般入試で合格校を確保して、本命の公立一般入試に備えておきたいところです。
保護者
こんな感じに推薦入試を受ける前から、合格したあとのスケジュールと、もし不合格だったときのスケジュールもシミュレーションしておくと、その次の行動がしやすくなりますね。
保護者
そうね。推薦入試は志望校に2回受験できるチャンスととらえる生徒さんもいるわ。だから、残念ながらいい結果が出なくても落ち込まないで、「次で合格しよう!」と気持ちを切り替えて一般入試に備えれば大丈夫よ。
教室長
おっしゃるとおりです。推薦入試は一般入試よりたやすく合格できるわけではありません。公立高校のように、一般入試よりもはるかに難しい推薦入試も存在します。学校の先生やお通いの塾などで、このあたりの事情をよく確認してから臨むようにしたいですね。そして、残念ながらの場合にも、すぐに気持ちを切り替えて次の入試に向けて手を止めないことが肝心です。
保護者
高校入試にしても、大学入試にしても、推薦入試という制度をよく理解して臨むことがわかりました。うちの子の気持ちをよく確かめながら、納得できる併願優遇の私立高校を探していこうと思います。