中学校では、卒業した後のことを考える進路指導の時間があります。最近では「キャリア教育」とも呼ばれています。進路や将来のことにもかかわるので、キャリア教育について親が理解しておくことは必須です。さらに、家庭でもできるキャリア教育のことも知っておきましょう。
目次
中学生の「進路指導」はどんなことをするの?
保護者
なんだか少し早い気もするのですが、中学1年生も進路に関することを考える時間が授業としてあるようです。
保護者
進路指導のことね。うちの子もあると言っていたわ。確か、キャリア教育の授業と言っていたかしら。
教室長
進路指導もキャリア教育も同じことのようですよ。最近は目先の受験や高校進学のことだけではなく、「将来の職業のことを考える作業」という本来の意味を伝えようとして、あえて「キャリア教育」と呼ぶそうです。
保護者
なるほど。職業のことも含めて考えるのであれば、有意義な時間になりそうですね。
教室長
中学2、3年生の生徒さんに「将来、どんなことをしたいの?」と聞いても、「わからない」と言われることがほとんどだと思います。そんな生徒さんはまず、どんな職業があるのかを知り、イメージを膨らませることが大切です。また、今の小学生の過半数は、まだ世の中に存在していない仕事に就くだろうとも言われています。 ですから、具体的な職業名ということではなく、例えば「人と関わる仕事」といった感じに、方向性を決めておくだけでもよいと思います。
保護者
確かにスマートフォンのアプリ開発のような仕事は、最近になって出てきたものね。昔は想像もつかなかったわ。
教室長
それも最近とても人気のある職業の1つですね。これから出てくる新しい職業に就かないとしても新しい時代に柔軟に対応していけるような広い視野で、将来を考えられるようになっておく必要がありそうです。
保護者
具体的には、どのような内容なのでしょうか。
教室長
まずは、これまでの自分の歩みを振り返ることや、世の中の職業を知るところから始めるようです。
保護者
うちの子、自分史にできるほど自信を持って書けることなんてあるかしら。
教室長
大丈夫ですよ。やり始めれば、おもしろいようにどんどん書き出せるようになります。記憶を呼び起こしやすいようにアシストする項目もあるので、一例を挙げてみましょう。
【自分史の項目(一例)】
・表彰されたこと
・得意なこと、趣味、がんばっていること
・文集で書いた将来の夢
・各学年でどんな役割を果たしたか
→委員会、体育祭、文化祭、合唱祭、部活動、クラブ活動、ボランティア活動、地域での活動など
保護者
趣味やクラブ活動なども項目に入っているんですね。
教室長
スポーツに強い興味があるなら、自分でやることだけではなく、スポーツ科学を研究する職業やスポーツにかかわる医療の世界なども考えられます。とにかく視野を広く持てるように調べたり、考えたりする練習の時間なのです。
保護者
なるほど。自分の想像以外にもさまざまな仕事があると知ると、職業について考えるのが楽しくなりそうですね。
教室長
職業を知る作業は、その他にもあるので一例を挙げてみましょう。
【世の中の職業を知るための項目(一例)】
・興味のある職業や資格を書き出す
・その職業につくためのステップを調べる
・選ぶ時に優先するものとその理由を書き出す
→やりがい、給料、楽しさ、特性や能力(専門性)、働く時間、安定、職場の雰囲気
保護者
「その職業に就くためのステップ」から受験を考えられれば、一概に学力だけで志望校を決めることなく、より強い目標になりそうですね。
教室長
そうですね。ここに挙げた項目はほんの一例ですが、このような項目をたくさん使ってワークシート形式でこれまでの自分を思い出していくことが、キャリアについて考えるスタートになります。
中学生の進路指導の一環として高校受験を考える
教室長
先ほども少し触れましたが、進路指導のワークシートの1つに「希望の職業に就くためのステップを調べて現在まで逆算してみよう」というものがあります。
保護者
逆算ということは、最終的には「現在の段階から次のステップをどうするか」になるのですね。
教室長
その通りです。中学3年生にとっては、とても現実味のある話になってきます。
保護者
自分の学力と志望校に密接にかかわってくるステップということですものね。
教室長
ただ、選んだ学校で職業が決定してしまうわけではないので、次のステップが限られてくるような考え方はせずに、あくまでも可能性を広げるための作業をしているのだと考えることが重要です。
保護者
なるほど。
教室長
逆算の一例として警察官になるまでのステップを調べてみましょう。
【逆算例】
21歳 公務員試験に合格。その後、警察官としてキャリアを開始。
18歳 高校卒業後、大学へ入学(法学系など)
15歳 中学卒業後、高校へ入学(普通科など)
保護者
公務員の試験を受けるんだったら、やはり法学系の学部(大学)を出ておくと有利ですよね。
教室長
確かにそうですね。でも警察官になってからどこでどんな仕事をしたいかによって変わってくると思いますので、ここでも視野を広く持つことが大切です。採用区分によっては、高校卒業後に試験を受けて警察学校に入学することも可能ですからね。
保護者
職業としては同じでも、仕事の内容で少しずつ変わってくるんですね。
教室長
先ほど出てきたアプリの話ですが、ITやゲームに関する興味だけでなく、これからは必然的に国際的な知識も習得していることが求められてきます。これから新しく出てくる職業に関しては、さらに柔軟な考え方や国際的な感覚が必要になってくるのです。
保護者
つまり、採用する会社がそのような考え方ができる人材を受け入れるだけでなく、高校、大学もそのような人材を育てていきたいということですね。
教室長
まさにその通りです。2020年に行われる入試改革もこのことに関係があると言われています。それに伴って、中学生の進路指導もそのようなキャリア育成を視野に入れたキャリア教育をしていこうとしているのです。
中学生の家庭内でもできるキャリア教育
保護者
学校では機会がたくさんありそうなので調べやすいですよね。その他の場所でキャリアについて考える方法や、親がしてあげられることはあるのでしょうか。
保護者
図書館かしら。資料はありそうよね。
保護者
職業のことをまとめた本を書店で探すこともできそうね。
教室長
それらの方法はどれもとてもよいと思います。実は進路指導をキャリア教育という本来の意味で理解していれば、資料などがない学校以外の場所でもできることがほかにも見えてきますよ。
保護者
どんなことでしょうか。
教室長
お子さんの趣味や興味があることなど熱中していることがあれば、それを思いきり取り組めるようにしてあげることです。
保護者
ワークシートで書き出す自分史のところで役に立ちそうね。
保護者
そういうことなら、親としてもすぐにしてあげられそうな気がします。
保護者
なるほど。つい勉強しなさいとばかり言ってしまいがちですが、熱中しているスポーツがあれば、地域のスポーツクラブなどもキャリア教育の1つになるチャンスになりますね。
教室長
よい経験だと思います。勉強や知識は学校や塾が教えてくれます。それをきっかけに、どのように活用していくかはそのお子さん次第です。ボランティアや世の中の仕組みについて知ったりかかわったりするのは、家庭や親子のあいだでの取り組みが大切になると思います。
保護者
勉強と並行して、そのような活動にも取り組めるようにアシストしてあげたいところですね。そういえば、この前ボランティアをしてみたいと言っていたから中学1年生のうちに経験させてあげようかしら。
教室長
まさにその通りですね。ボランティアなどの社会貢献や地域の活動など、学校や家庭以外とのつながりがあるものは、お子さんの発想力や知識の量、今後の可能性を大きく広げられるチャンスです。まさに家庭でできるキャリア教育ですね。