兵庫県の公立高校入試 3つの選抜方法

兵庫県の公立高校入試には、一般選抜(学力検査)・推薦入学・特色選抜と大きく分けて3つの選抜方法があります。

推薦入学と特色選抜は2月中旬ごろ、一般選抜は3月中旬ごろに試験があり、どの高校を受験するのか、学力や目的に合わせて受験方法を選ぶことができます。
まずは、それぞれの選抜方法の特徴をご紹介します。

 

①一般選抜(3月)

最もポピュラーな選抜方法が一般選抜で、学力検査と調査書を使って合格が決まります。
お住まいがある学区の高校にのみ出願できます。

学力検査は、国語・数学・英語・理科・社会の5教科です。
調査書の評定は中学3年生の成績が判定に使われますが、理科・社会など、学年によって分野別に学習する教科は中学1・2年生での「学習の記録」も十分に参考にすることになっています。

兵庫県の公立高校入試では、当日の学力検査と調査書を1:1の割合で得点にして判定を行っているので、調査書も重要度が高くなっています。

定期テストや小テストで測れる「知識・技能」だけでなく、グループでのディスカッションや発表・レポートなどでの「思考力・判断力・表現力」が大切です。
そして、いかに学習を調整して、知識を習得するために試行錯誤しているかといった「主体的に学習に取り組む態度」も評価されます。

 

②推薦入学(2月)

推薦入学は、公立高校の中で単位制普通科高校やコースのある普通科高校、普通科を併設している高校の専門学科・総合学科で行われます。

コースのある普通科・専門学科 (一覧)

自然科学系コース

津名/淡路三原/川西緑台/柏原/篠山鳳鳴/市立西宮東/姫路飾西/福崎/相生/市立姫路/八鹿

 

国際文化系コース

神戸鈴蘭台/宝塚西/市立伊丹/明石城西/姫路飾西

 

総合人間系コース

御影/尼崎/市立西宮東/北条

 

健康福祉系コース

市立飾磨

 

理数に関する学科

神戸/兵庫/尼崎小田/宝塚北/市立西宮/明石北/加古川東/小野/姫路西/龍野/豊岡

 

国際に関する学科

国際/市立葺合/尼崎小田/鳴尾/明石西/三木/市立琴丘

 

その他

舞子(環境防災学科)/西宮(音楽学科)/宝塚北(演劇学科)/市立尼崎(体育学科)/明石(美術学科)/社(体育学科)/県立大附属(総合科学科)

 

募集定員全体の50%以内(学校によっては募集定員すべて)がこの選抜で決まります。
試験は面接が必須で、学校によっては小論文や適性検査、実技検査が行われることもあります。
また、推薦入学の受験には中学校長の推薦が必要になります。推薦をもらえるように、日頃から良い成績を取っておくことが大切です。

単位制普通科や専門学科・総合学科は、学区を気にせず基本的に県内全域どこからでも出願できます。
※コースのある普通科は、お住まいの学区内にある高校にしか出願できません。

例えば、行きたい総合学科の高校がお住まいの学区外にあっても、推薦入学で受験することができます。
面接や小論文など、一般選抜とは異なった対策が必要になるので、志望校を早めに決めて推薦対策を十分に行っていくのが良いでしょう。

 

③特色選抜(2月)

公立高校の中には、生徒の個性や能力を伸ばそうと「独自の特色ある教育を行う高校」があります。

独自の特色ある教育を行っている高校 (例)

●須磨東高校 リーガルマインド類型
SDGs(持続可能な開発目標)についての探究活動や模擬裁判などを通して、法的思考力・判断力を身につけることを目的としています。

 

●伊川谷高校 コミュニケーション類型
講義やワークショップなどで日本語のコミュニケーション能力を学びます。2年次以降は、韓国語や中国語を習得しながらアジア文化を理解していきます。

このような高校で学びたいと考える人のために、一般選抜より前に行われる入試が「特色選抜」です。
推薦入学とは異なり中学校長の推薦はいりませんが、推薦入学ほど合格者の枠は多くなく、募集定員全体の20%以内(最大でも40人)です。
調査書・志願理由書と面接(学校によっては小論文[作文]や実技検査)の結果で合否が決まります。

その高校を第一志望にするのが前提なので、特色選抜で合格したら必ず入学する必要があります。
特色選抜は実施校が限られています。お子さまの志望校で特色選抜が行われているかどうか、下の表で確認してみましょう。

 

特色ある教育を行っている高校 (一覧)

学科 学校名
自分・社会学科系 須磨東/西宮北/市立西宮
自然科学 星陵/舞子/西宮北/伊丹/明石/西脇/赤穂
環境・情報 尼崎北/西宮南/明石清水/三木北/吉川/家島
教育 夢野台/西宮甲山/猪名川/三田西陵/明石西/山崎
芸術・スポーツ 伊川谷北/尼崎西/高砂/松陽/播磨南/姫路南/神埼/村岡/市立尼崎双星
看護・福祉 東灘/神戸北/尼崎小田/伊丹西/高砂/多可/社
国際 川西明峰/加古川西/綱干/市立尼崎
総合 長田/伊川谷/神戸高塚/洲本/鳴尾/宝塚/宝塚東/川西北陵/北摂三田/高砂南/東播磨/姫路別所/夢前/伊和/上郡/出石/浜坂/生野

 

知っておこう!兵庫県高校入試の特徴的な制度

兵庫県の公立高校受験では、学区制や複数志願選抜制度などの仕組みがあります。特徴や注意点をよくチェックしておきましょう。

 

県内5つに分かれる「学区制」

兵庫県の公立高校には学区制があり、県内が5つの学区に分かれています。

学区 市郡
第1学区 神戸市/芦屋市/洲本市/淡路市/南あわじ市
第2学区 西宮市/宝塚市/尼崎市/伊丹市/川西市/川辺郡/三田市/丹波篠山市/丹波市
第3学区 明石市/加古川市/高砂市/加古郡/小野市/三木市/加東市/加西市/西脇市/多可郡
第4学区 姫路市/神埼郡/たつの市/相生市/赤穂市/宍粟市/揖保郡/赤穂郡/佐用郡
第5学区 豊岡市/美方郡/養父市/朝来市

 

一般選抜では、お住まいの学区にある公立高校にのみ出願できます(隣接する学区にある高等学校にも出願できる地域もあります)。ただし、専門学科の一般選抜では県内全域から受験することができます。

推薦入学では、単位制普通科・専門学科・総合学科は学区外からの出願も可能です。特色選抜では、県内全域が通学区域となります。

 

一度に2学科を受験できる「複数志願選抜制度」

複数志願選抜制度とは、公立高校の受験で第一志望と第二志望を同時に志願できる仕組みです。第一志願のみでの志願もできる全日制普通科(単位制を含む)と総合学科の一般選抜で取り入れられています。

この制度を使って受験すると、第一志望校の合否判定のときに「第一志望加算点」がされて、第一志望の合否判定が優先されるようになります。

学区 第一志望加算点
第1学区 25点
第2学区 20点
第3学区 25点
第4学区 30点
第5学区 30点

 

現状の学力や志望校の難易度に合わせて、複数志願選抜制度をうまく利用してみましょう。
例えば、難易度の高い「挑戦校」を志望したい場合は、第一志望に挑戦校を、第二志望に合格圏内の高校を選ぶと良いでしょう。

挑戦校を第二志望で受験すると、その高校を第一志望で受験している受験生には加点がある一方で、第二志望の受験生には加点がないため、得点上不利になってしまうからです。

逆に、合格安全圏の高校を第一志望で受験し、加算点を使って合格をより確実にする方法もあります。

なお、複数志願選抜制度を使うには、2つの志望校がどちらも同じ学区(または隣接区域)に入っている必要があります。第一志望校は第1学区、第二志望校は第3学区、というような選び方はできないので注意しましょう。

 

出願後に一度だけ変えられる「志願変更制度」

志願変更制度は、一般選抜への出願後、志願変更期間中に一度だけ志望校・学科を変更できる制度です。
2月中旬に出願したあと、3月初旬に倍率などの出願状況を見て、条件を満たせば一度だけ志望校を変更することができます。
先にご紹介した複数志願選抜制度との組み合わせを考えると、志願変更が可能なのは次の4パターンになります。

 

①単独選抜実施校(複数志願を実施しない高校)から、別の単独選抜実施校への志願変更

複数志願選抜実施校から単独選抜実施校への志願変更

 

③複数志願した際の第二志望校の志願変更

 

④単独選抜実施校から複数志願選抜実施校への志願変更

同じ志望校の別の学科への志願変更のみ可能です。この場合、第二志望校を志願することはできません。

注意したいのは、複数志願選抜実施校の間での第一志望校の変更ができないという点です。複数志願選抜制度を利用する場合、第一志望にする高校・学科は特に慎重に選びましょう。

志願変更が締め切られると、倍率などが再度集計されて発表されます。

「あの高校、思ったよりも倍率が低い!」と第一志望を変更したら、他の受験生も同じく変更していて倍率が急上昇……といったことも起こりうるのが難しいところです。

受験成功のためには、最新の入試動向とお子さまの実力を把握して、しっかり受験戦略を練ることが大切です。
志願変更は、学校の先生や塾などの専門的なアドバイスを受けながらするのが良いでしょう。

 

 

合格判定の仕組みから見える、兵庫県公立高校【一般選抜】の対策ポイント

兵庫県の公立高校入試は、特色選抜や推薦入学では合否判定の方法が公開されていませんが、一般選抜ではその仕組みが公開されています。

一般選抜の合否判定では、原則として調査書の評定(いわゆる内申点)を点数化した得点(500点満点を250点に換算)と入試当日の学力検査の得点(250点)を合わせた500点満点で合否が決まります。

また、兵庫県の公立高校入試の特徴として、学力検査のある5教科より実技教科(保健体育、音楽、技術・家庭、美術)への調査書点の配分が大きいという点が挙げられます。
そのため、5教科だけでなく実技教科にも日頃からしっかりと組む必要があるといえます。

調査書や学力検査がどのように得点化されるのか、その仕組みから兵庫県公立高校の受験対策のポイントが見えてくるので、ご紹介していきます。

 

調査書:中3の成績も大切だが、日頃の授業も定期テスト対策も重要

兵庫県の公立高校入試では、調査書の評定(内申)は中学3年生(2学期まで)の各教科の評定を250点満点に換算して合否判定を行います。

  • 学力検査のある5教科の評定は4倍に換算する(100点満点)
  • 4つの実技教科の評定は7.5倍に換算する(150点満点)

 

このように、基本的には中学3年生の成績が調査書の得点を左右することになります。
(理科・社会などの分野別に学習する教科は、中学1年・2年の成績も参考にすることとされています)

しかし、だからといって中学1年・2年のときは日々の授業や定期テストをないがしろにしてもいいか、というと、そんなことはありません。
特に英語や数学などの教科は、中1からの学習内容が積み重なって単元が進んでいきます。基礎的な単元が身についていない状態では、中3の単元内容も理解できず、も良い成績を収めることは難しいでしょう。

また、中学1・2年の成績も参考にするとされている理科・社会も、抜かりなく対策したい教科です。
この2教科も分野別に学習するので、中3の範囲のみ対策しても不十分。中学1・2年生からしっかりと対策をしておく必要があります。

受験はまだ先だから……と先延ばしせずに、今受けている単元をしっかり理解しておくことが大切なのです。

なお、調査書には、教科ごとの評定のほかに、部活動や生徒会活動などの特別活動を記載する欄もあります。
合否判定のために点数化されることはありませんが、特別活動で特に優れた結果を残した場合に限り、合否判定のボーダーの点数から10%をひいた点数を合格の下限として特別に合否判定する高校もあります。

このような扱いをする高校は募集要項に書いてありますので、よく確認しておきましょう。

 

学力検査:過去問で実践練習をしよう

学力検査は、国語・社会・数学・理科・英語の5教科で各100点満点のテストがあります。
合否判定の時に、5教科合計500点満点の点数を0.5倍して、250点満点に換算します。

 

過去の学力検査での教科ごとの得点分布では、受験生全体の7~8割が平均点の上下20点を取っています。

そのため、ほかの受験生よりも得点で一歩抜きん出るためには、得意科目や点を取りやすい問題で得点を取りこぼさないようにしながら、難易度の高い問題にもチャレンジできるようにすることが大切です。

高校入試の学力検査は、2022年度から新たな学習指導要領の内容を踏まえた「新課程入試」が始まり、今後は出題傾向や難易度が大きく変わる可能性もあります。

しかし、試験の時間配分をつかめるように、過去問には早めに取り組み始めることをおすすめします。遅くとも、中3の12月ごろまでには取り組めるようにしておきたいところです。

過去問に取り組むまでの間は、次のような学習に取り組むのがおすすめです。

 

  • 中学1年生

基礎を固められるよう、予習復習を行いましょう。
英語や数学は特に積み重ね学習が大切な教科ですが、理科・社会の評定は中学1年生のものから調査書の評定(内申)の参考とされます。
まだ定期テストに慣れていないかもしれませんが、「一夜漬け」のテスト勉強では学習内容をすぐ忘れてしまって非効率的です。
原理や公式から理解したり、反復練習したりして、知識が積み上がっていくように対策していきましょう。

 

  • 中学2年生

授業にあわせて学習をし、予習はできなくても復習は必ず行い、理解できないところがないようにしておくことがポイントです。
また、余裕があれば中学1年生の苦手な単元を復習しておいたり、得意科目を作ったり増やしたりする学習をしておくと良いでしょう。

 

  • 中学3年生

本格的に受験勉強が始まります。模擬試験を定期的に受験し、夏休み後からは応用問題や実践問題などに取り組み、過去問へつなげられるよう受験対策を進めましょう。

 

 

高校入試対策は定期テスト対策から始めよう

兵庫県の高校入試は、複数の選抜方法や制度があり、複雑で分かりにくくなっています。
最新情報を正しく捉えて、日頃の予習・復習や定期テスト対策や模擬試験対策など、お子さまに合った受験対策を取ることが合格への第一歩になります。

兵庫県の高校入試対策を始めるなら、地域の受験情報や入試制度に詳しい塾へ、一度相談してみてはいかがでしょうか。
特色あるカリキュラムの高校や学区制の存在など、高校選びの際には考慮することがたくさんあります。そのため、お子さまに合った学校選びを相談できる塾が良いでしょう。
また、「複数志願選抜制度」をどう使うかなど、きめ細やかな出願指導が受けられる塾なら、保護者さまも安心できるのではないでしょうか。

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