大学入試の小論文は、難しそうなイメージを持たれやすいです。「どうやって書けばいいのかわからない」「何から対策したらいいの?」と悩んでいる高校生の方も多いのではないでしょうか。
しかし、小論文は基本的な構成ルールや書き方のコツさえつかめば、不安に感じることはありません。
この記事を読めば、小論文に何を書けばよいのか、どんな構成で書けばよいのかがわかるようになります。対策方法もお伝えしているので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
目次
小論文と作文の違いは?
小論文と作文は、「概念」と「求められる力」に大きな違いがあります。
種類 | 小論文 | 作文 |
概念 |
問われていることに対して、「意見」と「理由(論拠)」を説明する文章 |
ある出来事について感想を書く文章 |
求められる力 |
論理的に考える力や説得力など”学力”が求められる |
表現力や文章の流れを考える力、感性の豊かさなどが重視される |
小論文の配点項目には、文章表現や漢字の正確性などの項目がありますが、内容や論理性が配点の50%を占める大学もあります。
つまり、小論文は文章力だけでなく、論理的に考える力や分析力、他者に分かりやすく伝える力など「大学で学ぶときに必要な力」も問われるということです。
大学入試の小論文ではどんなテーマが出題される?
小論文のテーマは、大学や学部・学科によって大きく変わります。すでに志望校が決まっている場合は、ここ数年でどんなテーマが出題されたかチェックしておきましょう。
次の表では、過去の大学入試で実際に出題された内容と傾向をもとに「今後出題が予想されるテーマの方向性」を学部別にまとめています。
学部 | 予想されるテーマ | 過去出題例(2023年度) |
文学部・外国語学部系統 | 「人間」や「文化」、文化を支える「言語」に関連し、現代社会の問題をテーマしたものが多い |
・慶應義塾大学・文学部 『芸術が人間にとってどのような根源的な意味を持つか説明する文を要約し、人間の創造性について考えを書く。(760字)』
・群馬県立女子大学・文学部 『言語を操るだけでなく「物語」を扱うのが人間のコミュニケーションだと述べた文より、自分の考えを論じる。(600字)』 |
教育学部系統 | 「教育・若者・子ども」に関するテーマが多いが、専攻分野によって、内容はさまざま |
・大阪教育大学・教育学部 『すぐに知識を教えない教育・きょうだいヤングケアラーを述べた2つの文より、学校が行える対応などを書く。(1600字)』
・青山学院大学・教育人間科学部 『食育として実践したいことを示す表から傾向を記し、学校数とその在学者数を示す図より特徴と考察を述べる。(500字)』 |
経済学部・法学部系統 | グローバル社会や経済システム、環境問題など、時事的なテーマが多い |
・東京都立大学・法学部 『社会課題の解決が企業価値を高めることにつながるという文より、SDGsへの対応が求められる理由を書く。(800字)』
・関西大学・経済学部 『地域経済を担う工場の減少を危惧する記事と3つの図より、為替が国内生産に与える影響の変化などを書く。(900字)』 |
工学部・農学部・理学部系統 |
・学部の専攻分野に関連した自然科学のテーマが多い ・自分の意見(主張)を書く問題に加えて、理科や数学の問題や、原理・現象を説明する問題がよく出る ・科学の発展と社会の関係についての知識も問われやすい。 |
・埼玉大学・理学部 『ヒトの血液の成分を説明する文より、哺乳類の成熟した赤血球が無核であることの利点などを述べる。(300字)』
・琉球大学・理学部 『ほとんどの単細胞生物の大きさが一定範囲に決まっていることについて、生物学的に考えられる理由を述べる。(400字)』 |
医学部・薬学部系統 | 医療現場の課題や医療制度、先端医療と生命倫理、科学論などのテーマが多い |
・東京医科歯科大学・医学部 『医療では答えの出ない事態に耐える力が必要だという文より、終末期医療で看護師に必要なことなどを述べる。(700字)』
・鳥取大学・医学部 『感染症の流行が私たちの社会生活に与えた影響・変化のうち特に重要だと考える事柄を2点挙げ、考えを書く。(600字)』 |
(参考)株式会社ベネッセコーポレーション|2023年度 国公立大・私立大一般入試 小論文出題テーマ一覧
大学入試の小論文のテーマについて、イメージはついたでしょうか?次からは、小論文の基本的な構成ルールや書き方をお伝えしていきます。
小論文の書き方~基本的な構成ルール~
小論文は「序論」「本論」「結論」の3つで構成されます。この3つの構成を理解しておくと、何から書き始めたらよいのか迷わずに済みます。
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構成ルールがわかったら、次は書き方のコツについて見ていきましょう。
小論文の書き方には5つのコツがある!
大学入試の小論文を書けるようになるには、次の5つのコツを押さえることが大切です。
<小論文の書き方のコツ>
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5つのコツを理解して演習を繰り返していけば、制限時間内にポイントを押さえた小論文を書けるようになります。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
書き方のコツ①出題されたテーマや設問をじっくり読み「何が問われているのか」を理解する
限られた時間のなかでポイントを押さえた文章を書くには、テーマの内容を正しく理解し、必要な要素をつかんでおくことが大切です。
出題テーマをじっくり読み、「何が問われているのか」「何について書けばよいのか」を理解しましょう。
このとき、文字数の指定や「○○を述べたうえで」といった条件も見逃さないよう、大事な箇所には線を引いて確認しておくのがコツです。
書き方のコツ②課題文や資料の中にあるポイント・キーワードを「書き込んでおく」
小論文では多くの場合、「以下の文章を読んで、○○について論じなさい/あなたの意見を述べなさい」というような形式で、課題文や資料が与えられます。
課題文や資料を読み込むときは、何度も出てくるキーワードに印をつけることがコツです。印がついていると、すぐに見返すことができます。
また、資料を読んでいるときに思いついたことを余白にメモしておくと、自分の意見を整理しやすくなります。
書き方のコツ③理由(根拠)や具体例が自分の意見とくい違いがないようにする
小論文で理由(根拠)や具体例を書くとき、自分の意見や主張を裏付けるものになっているか意識することがコツです。
理由(根拠)や具体例が自分の意見や主張と結びついていないと、説得力のない内容になってしまいます。
自分の意見・主張と理由(根拠)をつなげてみて違和感がないか、具体例が自分の意見・主張と関連するものであるかをチェックしてみましょう。
また、反対の立場から意見を批判してみて、自分の考えた理由(根拠)や具体例で反論できるかを確かめてみるのも一つの方法です。
書き方のコツ④「構想メモ」を準備しておく
小論文の構成には「論点」「意見」「理由(根拠)」の3つの要素を盛り込む必要があります。
いきなり文章を書き始めると失敗しやすいので、次の「構想メモの作り方」を参考に、まずは自分の考えを整理しましょう。そのうえで、文章全体を「序論」「本論」「結論」の3つに分けて、構成を組み立てることがコツです。
このとき、内容がブレていないか、流れが自然か、意味がつながっているかをチェックしましょう。
また、全体の長さをイメージして、文字数指定に収まりそうか、制限時間内に書き終えられそうか確認しておくことも大切です。
書き方のコツ⑤結論(自分の意見や主張)をはっきり書く
小論文を書くときは、読み手が納得できるように、論理的に書くようにしましょう。とくに本論では、各段落がどのような意味を持っているのか意識して書くことが大切になります(主張、理由、具体例など)。
本論で書かれた考察・理由・具体例などが結論を裏付ける内容になっているか確認し、結論をはっきり書くことがコツです。
文章を書き終えたら全体を読み返し、誤字脱字やおかしい表現がないかをチェックしましょう。
今さら聞けない!小論文の基礎知識まとめ
ここからは、小論文の出題形式や文字数、基本ルールについてお伝えしていきます。
小論文の基礎を理解し、大学入試に向けた対策を効率的に進めていきましょう。
小論文の出題形式は主に4つ
小論文の出題形式には、「課題議論型」「文章読解型」「資料総合分析型」「教科密着型」の4つがあります。
次のように、出題形式ごとの特徴を理解しておくと、大学入試に向けてどんな対策をすればよいかが見えてくるでしょう。
例) 『感染症の流行が私たちの社会生活に与えた影響・変化のうち特に重要だと考える事柄を2点挙げ、考えを書く。(600字)』(鳥取大学・医学部)
例)『ヒトの血液の成分を説明する文より、哺乳類の成熟した赤血球が無核であることの利点などを述べる。(500字)』 (埼玉大学・理学部)
例)『食育として実践したいことを示す表から傾向を記し、学校数とその在学者数を示す図より特徴と考察を述べる。(500字)』(青山学院大学・教育人間科学部)
例)『ほとんどの単細胞生物の大きさが一定範囲に決まっていることについて、生物学的に考えられる理由を述べる。(400字)』(琉球大学・理学部) |
全体の傾向として、「課題議論型」と「文章読解型」がよく出題されます。しかし、とくに国公立大の理数系の学部・学科では「教材密着型」の問題が出題されることが多いです。
大学や学部・学科によって出題されやすいタイプの傾向が分かれるため、志望校に合わせた対策を行いましょう。
小論文の文字数は「800字以内」の場合が多い!
小論文の文字数は「800字以内」の場合が多いですが、大学や学部によっては1,000字を超えることもあります。過去問題集で、志望校の傾向をチェックしておきましょう。
字数が多いほうが大変と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、字数が少ない場合は簡潔に書く力が必要とされるため、難易度が上がることもあります。
また、小論文は文字数を問わず「指定された文字数の9割以上(800字であれば720字以上)」を書く必要があります。
これは、単に文字数を埋めればよいというわけではありません。小論文では内容や論理性が重視されるため、文字数制限内でしっかり内容をまとめることも意識しましょう。
初心者向け!小論文を書くときの基本ルール
小論文を書くときは「読みやすさ」を意識することが基本ですが、他にも気をつけておきたいルールがあります。
小論文を書くときの基本ルール ・字の大きさやバランスを意識し、採点者が読みやすいように書く ・話し言葉は使わず、文章は「だ」「である」調で書く ・改行時は、最初の1マスを必ず空ける(原稿用紙の使い方を確認しておく) ・誤字・脱字に注意する ・数字を書くときは、縦書きの場合は漢数字、横書きの場合は算用数字を使う |
小論文を書く場合は、これらのポイントに注意しながら書きましょう。
小論文対策はいつから始める?大学入試で周りと差をつける3つの対策方法
小論文対策は早ければ早いほど効果的なので、高校1・2年生から対策をスタートすることが理想的です。
高校3年生になると、夏休み明けの9月以降は他の受験科目の勉強で忙しくなるため、遅くとも高3の春には対策をスタートしましょう。
具体的な対策方法としては、主に次の5つがあります。
- 読解力や思考力を身につける
- 背景知識を学習する
- ニュースや新聞などで時事的なテーマをインプットしておく
- 問題集などで繰り返し練習する
- 他の人に添削してもらう
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
読解力や思考力を身につける
課題文型の小論文の場合は、まず課題文で何が書かれているのかを理解する必要があります。
学校で論説文を習っているときに、各段落の内容を要約してみる、各段落の関係がどのようになっているか図解してみる、全体として何を主張しているのか要約してみる、自分ならどう考えるかをまとめてみる……といった、日々の学習の積み重ねが小論文対策につながります。
背景知識を学習する
小論文の出題テーマに関する知識(背景知識)を事前に勉強しておくと、テーマの内容を理解しやすくなる、学んだ知識を文章に盛り込めるといったメリットがあります。
志望校の過去問題集や小論文の問題集を使いながら、背景知識を身につけていきましょう。背景知識をノートにまとめておくと、後から確認したり、付け加えたりできるので効果的です。
また、本やネットでそのテーマについて調べ、関連する知識を身につけるのもおすすめです。その際、単に情報や知識を得るだけでなく「自分はこう考える」と思う習慣をつけておくことも大切です。
ニュースや新聞などで時事的なテーマをインプットしておく
課題文や資料の中には、社会問題や時事問題に関連して提示されるものもあります。例えばSDGs、働き方改革、生成AI、教育格差、経済格差などです。
普段からニュースや新聞などで時事的なテーマをチェックしておくことをおすすめします。その際、何が問題となっているのか、原因は何なのか、自分の意見はどうなのかを整理しておくとよいでしょう。
問題集などで繰り返し練習する
小論文を書くスキルは、書き方のルールや背景知識を学ぶだけでは上達しません。書き方のルールを踏まえて繰り返し練習をすることで、段々と書き方のコツをつかめるようになっていきます。
志望校の過去問題集や小論文の問題集を使って実際に文章を書き、繰り返し練習しましょう。
他の人に添削してもらう
小論文の練習は書いて終わりではなく、学校の先生など他の人に添削してもらうことで、自分では気づけなかった課題や弱点が明らかになります。
そして、添削でもらったフィードバックをもとに文章を書きなおし、さらに添削してもらうという繰り返しによって改善していくことが、小論文の上達につながります。
添削してもらう際には、論理的な考えを述べられているか、意見・根拠に説得力があるか、読みやすい文章になっているかをチェックしてもらいましょう。
しかし、添削のことを考えると、小論文対策を家庭学習だけで行うのは難しいかもしれません。そんな場合は、「東京個別指導学院」「関西個別指導学院」の利用も検討してみてはいかがでしょうか。
志望大学・志望学部の出題テーマに合わせた対策や添削もできるので、小論文の力を効率よく身につけられます。
志望校の出題テーマに合わせた小論文対策をしよう
ここまで、小論文の書き方のコツや対策をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
「自分だけで小論文対策をするのは大変」「志望校合格に向けて、何から始めればいいのかわからない」と思う場合は、総合型選抜・学校推薦型選抜、そして個別試験の小論文対策を個別サポートする、東京個別指導学院・関西個別指導学院の利用もぜひ検討してみてください。
大学ごとの出題傾向など、最新の受験情報も活用しながら受験戦略を立てるので、志望校合格に向けて、最短距離で対策を進められます。
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