2021年度より、新しくスタートした大学入学共通テスト(以下 共通テスト)。保護者さまが受験生だった頃のセンター試験と比べて、問題の出題傾向が全体的に大きく変わっています。
出題傾向が変わったことにより、これからの共通テストの国語は、センター試験で求められていた知識と技能を身につけるだけでは対応できません。
では、具体的に共通テストの国語の問題はどのように変わり、どんな力が新たに求められるようになったのでしょうか。
今回は、2023年度の共通テストの国語の出題傾向や、新たに求められている力を詳しくお伝えしていきます。具体的な対策方法やおすすめの問題集も紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
目次
2023年度の共通テスト(国語)はどのように変わった?
2021年から始まった「共通テスト」は、センター試験と比較して出題傾向が変わっており、2023年度は次のような変更点が見られました。
- 出題される文章(素材文)の形式が多様化してきている
- 漢字や文脈の「意味」を問う問題が増えている
また、共通テストの国語では、100点満点換算したときの平均点が年々下がっている傾向にあります。
この平均点のデータも踏まえ、共通テストはセンター試験と比べてどのようなことが大変になっているのかを、詳しくお伝えしていきます。
出題される文章(素材文)の形式が多様化してきている
センター試験と比べて、共通テストの問題では、思考力・表現力・判断力がより重視されています。
そのため、共通テストの現代文・古文・漢文では1種類の文章(素材文)だけでなく、2種類以上の異なる素材文を関連づけながら解答する問題が出題されるようになりました。
例えば…… ・2023年度は、関連するテーマで書かれた2つの論説文(現代文)を読み、それぞれの文章の共通点を考えて解答する問題 ・「和訳を含む同じ作者の2種類の古文」+「和歌」+「教室での話し合いの会話文」と言った、3つの素材文で構成された問題 ・「小説文」と「ポスターを含む“資料”“構想メモノート”」の関連性を考える+書いた文章を組み合わせた問題 ・漢文で書かれている「予想問題」と「模擬答案」の内容を、対句的表現や比喩を踏まえて考えさせる問題 |
出題される素材文の数が増えただけでなく、素材文の「形式」も多様化してきている傾向にあります。
この図のように、共通テストではさまざまな形式の文章が出題されるため、素材文の内容だけでなく、グラフや表を含むさまざまな素材の内容や意味も読み取って問題を解かなければいけません。
さらに、センター試験より出題される素材文の数や形式が増えている分、問題のページ数も増えています。それにもかかわらず、試験時間(80分)は2024年度の入試まではセンター試験のときと変わらないため、受験生たちは今まで以上に「素材文を早く読み取ること」も意識していく必要があります。
漢字や文脈の「意味」を問う問題が増えている
漢字問題や語句の意味を問う問題などは、センター試験と同じように、共通テストでも出題されています。しかし、2023年度の共通テストでは、このような「知識・技能を問う問題」の問い方が変わっているのです。
漢字問題では、漢字の読み・書きだけでなく、漢字の意味を問う問題が出題されています。例えば、2020年のセンター試験(本試験)では「本文の傍線部に適した漢字を含むものを選択させる問題」が5問ありましたが、2023年の共通テストでは「本文の傍線部に適した漢字を含むものを選択する問題」が3問、「傍線部の漢字と同じ意味で用いられる熟語を選択させる問題」が2問出題されました。
これらの変更点から、共通テストでは、単に漢字を暗記したり、語句の意味を知っていたりするだけで解ける問題が減っていることが分かります。
今後の共通テストに対応するには、漢字や語句などの基本的な知識・技能を身につけた上で、その知識・技能を実際に使用する場面に応用して考えて、漢字や文脈の意味を答えられる状態にしておくことが必要です。
特に「素材文から文章の意味を読み取って解答する問題」=「文脈の意味を答える問題」は、素材文の内容を素早く深く読み取らないと解けません。これまで以上に、文章の意味を読み取って問題に解答する力(リテラシー)が求められています。
共通テスト(国語)では文章(素材文)の意味を読み取るなどのリテラシーが重要に
共通テストの国語の出題傾向は大きく変わっており、センター試験のときよりも求められる力が上がっていることが分かりました。
では、今後の共通テストの国語に向けて、受験生たちはどのような力を身につけていけば良いのでしょうか。
共通テストで重視される力として、「リテラシー」があります。
リテラシーとは さまざまな素材文・図・グラフなどの情報を読み取り、複数出題される素材が「何を意味しているのか」を理解できる力 この「リテラシー」を身につけるには、論理的思考力を養うことが必要です。 論理的思考力を養うと、次のようなことができるようになります。 ・必要な情報を取り出して比較し、関連づけて整理する ・解釈した内容を、知識・経験に結びつけて再構築する |
上の図のとおり、センター試験のときと比べて、共通テストでは「思考力・判断力・表現力を問う問題」がさらに増えています。
これにより、「多様化しているさまざまな素材文が何を意味しているのか」や「何が問われているのか」を理解するといった、リテラシーが求められるようになるのです。
素材文を通して与えられた情報(根拠)をもとに、物事や課題を整理して結論(答え)を導き出すリテラシーを身につけておく必要があります。
リテラシーを養えば、複数の物事(根拠)を関連づけながら、順序を正しく立てて結論まで導き出す力を身につけられます。
今まで通り「基礎的な知識・技能」も必要!
共通テストでは、リテラシーが必要になると分かりましたが、今まで通り「センター試験で問われていた力」も求められます。
リテラシーの前に、まずは「基礎的な知識・技能」も身につけることからのスタートが必要です。
ここからは、現代文と古典それぞれで、具体的にどのような知識・技能が必要になるのかを見ていきましょう。
現代文では「背景知識」と「要約力」を身につける
現代文に対応するには、「背景知識」と「要約力」を身につけておくことが大切です。
現代文では、哲学、歴史、社会科学、自然科学、テクノロジー、文学、国際関係、芸術、産業などさまざまなテーマの内容が素材文として出題されます。基本的な語句の意味を理解することはもちろん、多様なジャンルの背景知識を増やしておくと、お子さまがあらゆる素材文に対応できるようになり、読解問題を解きやすくなります。
同時に、素材文の内容のポイントを本人の言葉で簡潔にまとめる「要約力」も身につけておくことが必要です。「結局、その素材文が何を言いたいのか」を捉えることができ、素材文の中にある論理関係を把握しやすくなります。
古典では「古典常識」と「単語力」も身につける
古典に対応するには、「古典常識」と「単語力」を身につけておくことが大切です。
昔の時代を生きた人々の生活や慣習と言った「古文常識」が身についていないと、文法や単語の知識があったり、現代語訳を読んだりしても、素材文から物語の情景や心情を読み取ることが難しくなります。
学校の教科書や演習問題、参考書、本・漫画などを通して「古文常識」を身につけられると、古典で出題される素材文のストーリーをイメージしやすくなります。
古文常識が身につけると共に、学校の教科書や単語集などを通して「単語力」もしっかり身につけることが重要です。
なお、漢文も同じように、「漢文常識」や「単語力」を身につけておくことが必要になります。お子さまが漢字を理解していて、句形を覚えているにも関わらず、漢文が読めない場合の原因は「漢文常識(主に中国古代の常識)」が不足しているからです。
共通テスト(国語)に向けてどうやって対策したらいいの?【おすすめの問題集も】
共通テストの国語に向けて、センター試験でも求められていた「基礎的な知識・技能」はもちろん、リテラシーを身につけるには、どのような対策が必要になるのでしょうか。
お子さまが家庭学習でこれらの力を身につけるには、まずは次のような問題集を使って、問題を解いて答え合わせをし、また解き直す……と言うように「問題演習」を繰り返し行うことが大切です。
問題集名 | 共通テスト過去問題の掲載 |
大学入学共通テスト 現代文 |
× |
大学入学共通テスト 古文・漢文 |
× |
2024年版 共通テスト過去問研究 国語 |
〇 |
共通テスト スマート対策 |
○ |
共通テスト スマート対策 |
○ |
なお、共通テスト対策の問題集を選ぶときは、共通テストの過去問題や予想問題など、どの問題が掲載されているのかを確認することをおすすめします。
また、問題集を使って問題演習を行うときは「問題演習ノート」を作成し、活用すると良いです。
共通テスト(国語)の対策に役立つ!問題演習ノートの作り方
問題演習ノートは、次の図のようなステップで作成していきます。
<国語:問題演習ノート作成のステップ>
|
センター試験と比べて、共通テストの国語は、素材文の数や形式が増えたことにより問題のページ数も増えているので、今まで以上に早く・正確に文章を読み取ることが必要です。
ステップ①~②で現状の実力を把握し、正確に解答できるようになったら、時間内に正しく解けるように練習をしていきます。
ステップ③では素材文で登場した分からない語句の意味を調べ、語彙や背景知識のストックを増やしていきます。
共通テストの国語では、センター試験よりも「思考力・表現力・判断力を問う問題」が増えていることで、問題を解くまでのプロセスが複雑化しています。
ステップ④~⑤を通してリテラシーを身につけ、単に「この問題の答えはA」と解答するだけで終わりにするのではなく「なぜこの問題の答えがAなのか」と言うように、お子さまが答えを導くまでの「根拠」も説明できる状態にしておくことが重要です。
「個別指導塾」では、共通テスト(国語)に必要な力を効率的に身につけられる!
センター試験と比べて、共通テストの国語の出題傾向は大きく変わりました。高得点をとるには、これまで通り「基礎的な知識・技能」を身につけるだけでなく、複数のさまざまな文章(素材文)や多様な図・表・グラフを読み取る力(リテラシー)や、解答に導くまでの「根拠」を説明できる力を身につけていく必要があります。
しかし、これらの力を家庭学習だけで身につけようとすると、「素材文を読んでも、意味が理解できない……」「考えた解答プロセスが合っているかわからない」など、お子さまが悩んでしまうこともあるかもしれません。
個別指導塾の東京個別指導学院・関西個別指導学院では、間違えた問題や解答プロセスのポイントの確認などを講師と一緒に「対話形式」で振り返れます。「コーチング指導」で気づきを促したり、答えを引き出したりする指導を行うので、お子さまが「リテラシー」を伸ばし、「解答の根拠を説明できる力」を効率良く身につけられます。
さらに、共通テストを詳しく分析している専門の部署が、最新情報を把握しているので、変化の大きい共通テストに合わせた対策を進められます。
志望校合格に向けて、お子さまの学力を無駄なくアップしていきたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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新課程の大学入試に対応した学習プランを作成。1人ひとりに合わせた専用のカリキュラムを提案するので、苦手な部分やつまずきポイントに絞って、大学受験対策を効率良く進められます。
(※1)参照:清水正史、多田圭太朗著『大学入学共通テスト 現代文 実戦対策問題集 新版』(2020)旺文社
(※2)参照:下屋敷雅暁、宮下典男著『大学入学共通テスト 古文・漢文 実戦対策問題集』(2019)旺文社
(※3)参照:教学社編集部著『2024年版 共通テスト過去問研究 国語』(2023)教学社