小中一貫校という言葉を聞いたことがある人は、まだまだ少ないかもしれません。小中一貫校とは、小学校の6年間と中学校3年間を接続する、新たな学校制度です。現在地方自治体の一部で、小中一貫校の動きが加速しています。今回は、まだまだ知らない小中一貫校についてご紹介します。
目次
小中一貫校って何?
保護者
この前、小中一貫校のことを友人から聞きました。今はそんな制度も出てきているんですね。
保護者
私もお客さんからそれを聞いたわ。小中一貫校のうち、特に2016年4月に制度化された義務教育学校では、「6年、3年」という枠組みにとらわれず、設置者の判断で「4,3,2」制や「5,4」制に変更できるようになったそうよ。
保護者
知りませんでした!ということは、9年間の義務教育を自由に組み替えられるってことですよね。そもそも何でそんな制度ができたんでしょう。
教室長
私も9年間の義務教育を自由に組み替えられる制度が決まった時、いよいよ始まったんだと思いました。制度ができた理由の1つに、今まで小学校から中学校に進学するにあたり、新しい環境変化についてこられず、不登校になってしまうお子さんが多くいたことが挙げられます。小学校から中学校への接続を円滑にすることで、お子さんたちが中学校生活にスムーズに入れるというメリットがあるんですね。
保護者
地域によって子どもの人口や学校を取り巻く状況も違うから、単に小中一貫校といってもかなり多様化するとも聞いたわ。東京都品川区をはじめ、首都圏を中心に今後広がっていきそうよね。
保護者
全然知らなかったです。しっかり自分の住んでいる地域のことも見ておかないといけませんね。
小中一貫校のメリットとデメリット
保護者
実際、小中一貫校には、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
教室長
メリットとして挙げられるのはまず、9年間という長い期間の中だからこそできる、独自のカリキュラムではないでしょうか。たとえば英語教育が年々進んでいますが、今までのような一般的な授業に加え、留学生の受け入れなど国際交流活動を行ったりする学校も出てくるでしょう。個人的には、英語学習はやはりますます多様化するような気がします。
保護者
児童や生徒を長く見ることができるのも、メリットになりそうですよね。長期間生徒を見ることで、児童・生徒の成績に合わせた個別の対応も可能になりそう。
保護者
児童・生徒だけじゃなくて、先生たちの人的交流にもつながるんじゃないかしら。統合が決まった学校では、小学校と中学校、両方の職員の交流も生まれるでしょうし。
教室長
あと、いわゆる「中1ギャップ」をはじめとした、生活面における課題の解消にもつながりますよね。
保護者
中1ギャップって何ですか?
教室長
簡単に言えば、小学生から中学1年生に進級した際に生じる、心理的なギャップや勉強のギャップのことです。新しい生活がスタートし、今までとのギャップにショックを受けてその環境になじめず、不登校になってしまったり、一気に成績が落ちたりすることがあるんですよ。
保護者
確かにそういう意味では、小中一貫校であれば、環境を変えずに進めるので、そのような心配は不要ですね。
保護者
でも逆にそこがデメリットにもなりうるわよね。だって固定的な人間関係が9年も続くんですもの。小学校である程度の立ち位置もできてしまうかもしれないし、人間関係における懸念は残りそうね。
保護者
おっしゃる通りですね。それは不安かもしれません。ほかにはどんなデメリットがありますか?
保護者
私は教員免許のことを聞いたわ。今は導入したばかりで、小学校・中学校の教員免許、どちらかだけでも小中一貫校で働けるようだけど、後々はどちらも持っていないといけないみたいね。
保護者
両方の免許を持っている先生は少ないでしょうけど、これからは両方の免許を持っている先生も増えてきそうですね。この小中一貫校の制度って、どのくらい浸透しているんですか?もうすでに、導入しているところがたくさんあるんでしょうか?
教室長
小中一貫校という意味ではすでに公立、私立ともに全国に相当数があるようですよ。また2016年4月にできた義務教育学校についても、すでに公立の22校が導入していて、今後、公立で114校、国私立で5校が開校する予定みたいです。もともと小中一貫教育は、2000年に広島県呉市が先駆けて始め、その後全国に広がりました。小中一貫校が制度化されてようやく10年です(*2016点時点)。今、いろいろと総括がなされる時期にあるのでしょうね。
保護者
そうなんですね。知らなかったです。
教室長
数で見れば多いようですが、まだまだですよ。実際、導入している自治体は、全国で見れば50%にも満たないですから。それに導入しているところも、問題にぶつかっています。
保護者
新しい制度を採り入れたら、問題も発生しますよね。ちなみにどんな問題があるのですか?
教室長
新しい施策だからこそ、小中一貫校のメリットを使いきれていない学校が多いようです。たとえば小学校と中学校の先生の単なる交換授業であったり、小中学校合同の学校行事を行ったりと、そのメリットが十分に生かされていないことが多いそうです。どの学校も「中1ギャップ」などの問題を解消するためなど、そもそもの設置目的が限定的といったこともあるみたいですね。
保護者
でも小中一貫校ができたのも、それを解消する目的があったんですよね。
教室長
目的の1つではあるんでしょうね。しかし大切なのは、「小中一貫した教育」がテーマであることです。ここの環境でしかできない教育を実施したいはずなのですが、やはり教員の温度差もありますし、そもそも事例があまりないので、どうしていくべきかは学校や自治体の判断にかなり任されることになってしまうんです。
保護者
小中一貫を実施している、他地域との交流はあまりないのですか?
教室長
数としてはあまりないようですね。また地域の温度差もあり、実際形骸化している部分もあります。だから理恵さんが言ってくれたように、他地域の学校とうまく連携を取りながら、小中一貫校のメリットを最大限に引き出せるような教育を探ることが必要なんでしょうね。
小中一貫校のこれから
保護者
メリットやデメリット、どちらもたくさんありそうな小中一貫校ですが、これからどうなっていくんでしょうか。
保護者
学校を一体型にするか、隣接する形にするか、分離する形にするか、それによって、問題の解消方法も変わってくるって聞いたわ。
保護者
なるほど。たとえば一体型だったら、校舎の新設とか、部屋数を増やす空間のあり方も考えていかないといけませんしね。
保護者
ただどの形にしても、中学生と小学生の交流が学習面でも行事面でも増えるので、両方に対応できるような、新学習プログラム等も必要になるんじゃないですかね。
教室長
それはきっとそうでしょうね。ただ問題はまだまだ山積みではありますが、小中一貫校ができることで、新たな教育の可能性が広がる気がします。
保護者
確かに。それはわくわくしますよね。そこから、今まで見えてこなかった教育問題や、逆にいえばプラスの発見もあるでしょうから、学習の幅は広がるはずですよね。今日聞いたこと、さっそく友人に話してきます!