長時間、集中して勉強するには、座りやすく姿勢がくずれにくい椅子選びが大切です。姿勢がわるいと、身体に負担をかけてしまうばかりでなく、学習成果にもマイナスに作用するとする研究結果もあります。では、どのようなポイントで選べばいいのか見ていきましょう。
目次
姿勢と集中力には相関関係がある
保護者
最近、肩が凝ってしかたがないの。なんだか目も疲れるし、本や新聞を読むのが面倒で困るわ。年齢のせいかしら。
教室長
もしかしたら姿勢がわるいことが原因かもしれませんね。姿勢がわるいと、集中力が続かず、単純ミスが多くなるという実験結果もあります。
保護者
そうなんですか?じゃあうちの子が勉強中に集中力が続かないのも、姿勢のせいかもしれません。教室長、姿勢と集中力のことをもっと詳しく聞かせてください。
教室長
はい。集中力が長続きしない子どもの特徴に、姿勢が安定しないことがあります。椅子にもたれる、机にひじをついているなどの傾向が多く見られるそうです。姿勢がわるいと、脳へ血液がうまく流れなくなり、脳の働きが低下します。目が疲れたり、肩や腰が痛んだりするのも、血行が原因かもしれません。血行が悪くなり、自律神経のバランスも悪くなることが集中力低下の一因とも考えられています。
保護者
うちの子にも思い当たるふしがあります。ということは、姿勢をよくすれば、集中力が高まるということでしょうか?
教室長
そうですね。まずは学習椅子を見直してはいかがでしょうか。座る姿勢が整えば、集中力アップも期待できますよ。
勉強するのに最適な椅子選びのポイント
保護者
勉強するのにおすすめの椅子の条件を教えてください。
教室長
まず、勉強するのに理想的な座り姿勢から確認しましょう。人間の頭部は成人でどれくらいの重さがあるかご存じですか?
保護者
そうですね、3kgくらいでしょうか?
教室長
いいえ、実は約5kgもあるのです。
保護者
5kgといえば、スイカ1個分くらいじゃないですか!
教室長
米国のニューヨークの医師ケネス・ハンスラヤ氏の研究(※2)では、「悪い姿勢で携帯電話を使うことが、首に強い負担をかけ、さらに悪い姿勢を助長している」と警鐘を鳴らしています。普通にまっすぐ立って頭を支えているだけでもかなりの負担がかかっていますが、これが前屈みになると、その負担はさらに大きくなります。15度前屈みになっただけで、首や肩にかかる加重は約12キロ、60度なら 約27キロにもなってしまいます。
保護者
そんな負荷がかかっているなんて!肩が凝るのも当然ですね。
教室長
そのとおりです。勉強するときはどうしても前屈みになりがちですから、いかに正しい姿勢を保って背骨への負担を減らすかというのが重要になってきます。人間工学では、次のような姿勢が“疲れにくく、学習に集中できる姿勢”とされています。
・座っている面に対して背筋が垂直
・膝の角度は90度
・きちんと足が床につく(※3)
保護者
なるほど。椅子を選ぶ際は、実際に売り場に行って、椅子に座ってみて、姿勢をチェックすることが大切なんですね。
教室長
そうですね。人の体のサイズには個人差があり、背骨のS字ラインのカーブの度合いも異なるため、できればサイズ調整ができる椅子を選ぶといいと思います。
保護者
子どもは成長によって体格も変わりますもんね。
教室長
はい。ですから、椅子の座面の高さや奥行、背もたれの角度など各部の位置をこまかく調整できるものがおすすめです。
保護者
わかりました。ほかには、どんなことに気をつければいいでしょうか?
教室長
ひじ掛けの有無も椅子選びには大切なポイントです。ひじ掛けがあるほうが、机にもたれかかることを防ぎ、よい姿勢が長く保てます。また、椅子そのものの安定性も重要です。キャスターがついているものや回転式の椅子は、グラグラして安定性に欠ける面があるので注意してください。購入の際は、キャスターにストッパーがついているものを選ぶといいでしょう。
保護者
長く使うことを考えると、耐久性も大事ですね。手入れがしやすくて、しっかりしたつくりのものを選びたいです。
学習椅子に座ると、勉強スイッチが入る
保護者
椅子と併せて机も買い換えたほうがいいのでしょうか。
教室長
そうですね。座面の高さを調節するのには、タオルを折りたたんで敷くのがおすすめです。クッションよりタオルのほうがヘタリにくく、重ね具合で微調整ができますよ。背もたれには、背中のカーブを支えてくれる低反発のクッションがおすすめです。足が床に届かない場合は、足置きを用意しましょう。
保護者
さっそくやってみます!
教室長
「この椅子で勉強すると、勉強がはかどる」というのが経験的にわかってくると、学習椅子に座るだけで、“勉強モード”のスイッチが入るようになります。
保護者
勉強をするのに、気分が盛りあがるポップなカラーにするなど、色柄にこだわってみるのもよさそうですね。
学習椅子ひとつでも実に奥が深いことがわかりました。ありがとうございます!
■参照URL
(※1)日本カイロプラクティック師協会_JSC 姿勢と計算成績の関係について
http://www.j-s-c.jp/mailsample3.pdf
(※2)米国のニューヨーク脊椎外科リハビリ病院のケネス・ハンスラヤ(Kenneth Hansraj)氏らの研究
PHS Chiropractic : Assessment of Stresses in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head / KENNETH K. HANSRAJ, Surgical Technology International XXV.
https://www.phschiropractic.com/webres/File/iTrac%20Surgical%20Technology%20Doc.pdf
(※3)「メディカルノート」悪い姿勢から学ぶ理想的な姿勢とは?
https://medicalnote.jp/content