これまでの知識偏重の教育に対する反省から、情報に対する深い素養、課題解決力や分析力、表現力・コミュニケーションをはじめとする「21世紀型スキル」がさまざまな文脈で取りざたされています。こうしたなかで、中学生や高校生にとって今まで以上に求められることになる「行動力」。中学生、高校生が成長していく中で学び取っていくべき「行動力」とはなにか、改めて探っていきましょう。
目次
行動力の意味とその必要性について
保護者
最近の教育現場では、「主体的に行動できるか否か」が成績の評価に大きく影響する、というのは本当でしょうか?
教室長
そうなんです。文部科学省が推進する教育改革の提言のなかに「アクティブ・ラーニング」という教育アプローチが頻繁に用いられるようになりました。
保護者
「アクティブ・ラーニング」ってよく聞く言葉ですよね!具体的にはどういう意味なんですか?
教室長
アクティブ・ラーニングとは、「課題の発見・解決に向けた主体的・協動的な学び」である、と文部科学省は定義しています。こうした指導現場での教え方の変化―もちろんその背景には思考力・判断力・表現力などの力をつけていきたいと考える新学習指導要領の考え方が背景にあるわけですが、だからこそ主体的に学習に取り組む態度や姿勢が、成績の評価において重要になってくると予想されます。
保護者
知識偏重の教育が見直されているからこそ、主体的に学ぶ姿勢や子どもの行動力などが問われているということかしら。
教室長
まさにおっしゃるとおりだと思います。
保護者
でもこうした教育現場や指導法の変化によって、成績の評価方法がかわるということは、今まで評価されていたお子さんにも影響があるのでしょうか?
教室長
どんなに頭のいいお子さんでも、それをなんらかのかたちで表現したり、きちんと行動に移したりしないと、評価されにくくなってくる可能性があると思います。ペーパーテストだけの成績ではダメということですね。適性を見極めた上で、お子さんがイキイキと行動できる分野を見つけられるようにサポートしてあげたいですね。
保護者
うちの子たちは、スポーツでは行動力を発揮できていると思います。でも、勉強ではさっぱりなんですよねぇ。
保護者
あら、スポーツ分野で行動力を発揮できているなんて、すばらしいことじゃない!
教室長
そのとおりですよ!大切なのは、どういう場面でお子さんの行動力が発揮されるのか、見極めてあげることです。自分の好きなこと・興味のある分野、または自分のきらいなこと・苦手な分野を把握しておくことは、行動力を高めていく上でも重要なプロセスだと思います。
保護者
なるほど。ほかには、どんな場面に注目したらいいのでしょうか?
教室長
たとえば、仲のいい友だちとのコミュニケーション・初対面の人とのコミュニケーションに注目してみると、「初対面の人にもあまり物おじしないな」など気づくこともあるかと思います。様々なシーンを想定して、お子さんがチャレンジできる環境をつくってあげることが大切ですね。
行動力を身につけるにはどうしたらいいか?
保護者
とはいえ、今まで消極的な性格だった子どもが、いきなり自分から行動するのはやはり難しい気がします。行動力を身につけるのに、なにかいい方法はあるのでしょうか?
教室長
行動力を身につける、向上させるにはさまざまなアプローチがあります。お子さんによって個性がありますから、どのアプローチが正解かということは一概に言えません。ただ、心理学の知識をすこし持っておくと、役に立つかもしれません。行動を変えていくように促すアプローチを心理学では「行動変容」と呼びます。この「行動変容」のプロセスには、それぞれ「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」といった5つのステージがあるとされています。たとえば、勉強に興味のないお子さんに強制的に勉強をさせようとしても、なかなか行動には移らないですよね。この場合、お子さんは勉強に関して「無関心期」にあるといえます。そうした段階では、まず勉強することで起きるメリットを伝えてみます。やる気が生まれてくる可能性があります。
保護者
無理やり勉強を強制する前に、まず勉強するメリットを教えて「関心期」にもっていくことが大事なのね。
保護者
なるほど!スポーツの世界でも、練習することで生まれるメリットを伝えるコーチング方法があるらしいですよ。うちの子にも「成績が上がったら、スポーツ推薦入試が有利になるよ!」と言ってみますね。
保護者
ただ「勉強しなさい!」と言うだけより、ずっと効果がありそうね!
教室長
監督やコーチが、選手にどうやって主体的・協動的に行動をとってもらうかというのは、スポーツ指導現場では普遍的なテーマの1つですね。また、近年注目を集めている行動関連のアプローチに、アサーティブ・コミュニケーション(assertive communication)というものがあります。この手法も、企業の研修などに採り入れられています。
保護者
アサーティブって、どういう意味ですか?
教室長
アサーティブとは、これは自分も相手も尊重した自己主張・自己表現のアプローチです。これは、決して自分のワガママを通すための自己主張ではありません。たとえ自分と相手の意見が食い違っても、自分の意見や希望をしっかり伝えつつ、双方が納得するように話の流れを持っていくことが大事なのです。
保護者
引っ込み思案なお子さんもいると思うのですが、そういったお子さんたちは、どうすればアサーティブができるようになるでしょうか?
教室長
その人のパーソナリティは簡単に変えることはできませんが、コミュニケーションの方法は変えることができます。アサーティブについて学ぶと、その人特有のコミュニケーション・パターンを気づかせ、変えていくことができるでしょう。また、お子さんが自分の意見を言いやすい環境をつくってあげるよう、すこし意識してみましょう。
行動力をつけるメリット・デメリット
保護者
行動力を身につけられると、具体的にどんなメリットがありますか?
教室長
行動力をつけるメリットはさまざまです。具体的には「何事も自分で考えて判断できるようになる」「自立心が芽生える」「自信がつく」「失敗するのもいい経験であるということがわかる」「気持ちの切り替えができるようになる」「勉強の時間、遊びの時間などを自分でスケジューリングできるようになる」「人間関係が豊かになる」などのメリットがあると思います。
保護者
逆に、デメリットはありますか?
教室長
あまり考えられませんが、行動力が誤った方向にいくと「自分本位になってしまう」「協調性のない人間だとまわりから受け止められてしまう」といった危険性もあるでしょう。そうした誤解を招くことにならないように、周囲との人間関係のなかで適切な行動をとれるようにサポートしてあげることが大切ですね。
保護者
保護者が過保護になりすぎないことも、重要なポイントかもしれませんね。
教室長
内申点や成績の評価ばかりを気にするのはよくありませんが、行動力やコミュニケーション力といった対外的なスキルが、今後ますます重要視されるようになってきます。大人になってから行動を習慣化できるようになるのは、なかなか難しいものです。中学生や高校生の時期から行動力を身につけておくことが、きっと大切なのだと思いますよ。