ホームステイ先はどんな基準で選べばいいの?

保護者

娘の学校ではホームステイをするお子さんが多いのですが、みなさんどうやって情報を手に入れているのかわかりません。ホームステイについてなにかご存じですか?

教室長

まず、ホームステイとは、海外の一般家庭に寄宿して、その国の文化や生活を体験することです。ホームステイ期間中に地元の学校の英語プログラムに参加することもありますが、正式な単位認定とはならないことがほとんどです。それに対して、留学は正式な手続きを経て、海外の教育機関で学ぶのが一般的です。場合によっては「単位を取得する」「すべての課程を終えて現地の学校を卒業する」といったことも可能です。高校生が留学してその国で卒業するとなると、まだ少数派といえますが、ホームステイであればかなり一般的になってきました。

保護者

ひとことでホームステイと言っても、目的によって行先・滞在期間・費用などが全く異なるわ。まず目的を明確にして、ホームステイ先を選ぶことが大切ね。

保護者

現地の教育の質や、治安なども気になりますよね。

教室長

おそらく、一般的にイメージされるホームステイは、語学力アップなどを目的とした英語圏の国々で行うものになると思います。その英語圏の国々でも、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなど各国で、それぞれ受け入れ制度や生活習慣などがいろいろと違います。

保護者

ホームステイ先として、おすすめの国や地域はありますか?

教室長

目的によって変わってきますが、やはり日本からのホームステイ先として実績のある英語圏の国々が留学しやすいのではないでしょうか。個人的におすすめなのは、南半球のオーストラリアやニュージーランドですね。場所にもよりますが、概して治安がよく、英語圏なのでとてもなじみやすいはずです。日本との時差もわずかですから、すぐに現地での生活に入れることでしょう。また、アジアや中南米にホームステイするといったケースもあります。これから経済発展していく場所を若いうちに肌で感じておくことはよい刺激になるはずです。

保護者

なるほど。ホームステイといえば、ヨーロッパや北米などをイメージしがちですが、マスターのおっしゃるように、視点を変えてみると、さまざまな選択肢があるわね。でも親としてやっぱり気になるのは、費用ですね。

教室長

確かにそれなりに費用はかかりますね。お子さんがお通いの学校で修学旅行のようにアレンジしてくれる場合もありますが、ホストファミリーを紹介してくれる留学エージェントなどと呼ばれる業者を利用するのも一般的です。諸経費込みで30-40万円くらいはかかりますから、家庭としても事前の準備は必要でしょう。

保護者

うちの子たちには関係ないと思って聞いていましたが、スポーツを目的にしたホームステイもあると聞いたことがあります。

教室長

そうですね。サッカーをやっているお子さんならブラジルに、卓球をやっているお子さんなら中国にといったように、ホームステイして現地の学生選手と交流を持つこともあるようです。

保護者

役立つのは、必ずしも勉強のためだけではないですよね。ただ、娘の高校の保護者のあいだでは、ホームステイ経験が進路選択で有利になるという話がよく出るのです。本当なのでしょうか?

教室長

早いうちから国際感覚が身につくなどのメリットがやはり大きいでしょう。最近は、私立中学・高校でもホームステイや短期留学をカリキュラムに組み込んでいる学校が増えてきました。

保護者

高校生のうちから国際感覚とは。今の子たちはすごいわね。

教室長

まだ一部の学校に限られていますが、国際バカロレア(※)が取得できるカリキュラムが注目を集めています。これによって取得できる国際バカロレア資格によって、世界100ヵ国以上の国々にある20,000校以上の大学受験資格・入学資格が付与されます。高校の段階で海外に出るのではなく、高校卒業後の留学を目指して勉強しておくという考え方ですね。国際バカロレア資格はまだ日本では一般的ではありませんが、文部科学省も、グローバル人材育成の観点から、このプログラムの普及・拡大を推進しています。

ホームステイを成功させるためのポイント

保護者

子どもたちのなかでも、特にホームステイに向いているタイプがいると思うのですが、ホームステイを成功させるヒケツはありますか?

教室長

ホストファミリーもボランティアで協力してくれる場合もあれば、有償の場合もあります。いずれにしても、ホストがお子さんの面倒をすべて見てくれるわけではありません。重要なのは、その年齢相応の「自立」ができているかというのがポイントだと思います。

保護者

「自立」させるといっても、具体的にどんなことから始めればいいのか悩みますね。

教室長

「自立」といっても、そんなに難しいことではありません。たとえば、掃除、ベッドメイキング、洗濯など、ふだんは保護者がやってくれることも全部自分でやるといった経験を留学前からさせておくといったことも「自立」の1つです。「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、ホームステイに行かせる前から、生活の中で過保護になりすぎている部分を修正していくことが重要です。

保護者

それなら、今からでもすぐに取り組めそうですね。一人娘で過保護になっていると感じることもあるので、ホームステイが「親離れ」「子離れ」のきっかけになるかもしれない。

保護者

他に気をつけるポイントなどはありますか?

教室長

当然のことですが、「ありがとう」という感謝の気持ちを相手に伝えることも非常に大切ですね。また、笑顔は万国共通ですから、なるべく笑顔でいられるような心構えをもたせることも成功するヒケツだと思います。

保護者

自分の意見をしっかり伝える、ということも大事よね。

教室長

「言わなくてもわかってもらえる、わかってほしい」という思考は、海外では通用しません。ホームステイ先の文化を受け入れつつも「イヤなことはイヤ」というふうに、自分の思ったことは遠慮せず相手に伝えることも大切です。

保護者

日本人同士だと、意見を言うときらわれてしまうのではないかという意識がありますよね。

教室長

自分の意見を主張することと、わがままをいうことは別です。「なぜそう思うのか」という理由や根拠を説明できれば、ケンカになったりきらわれたりせずに、議論や話し合いで解決できると思いますよ。

ホームステイをすることが日本を知ることにもつながる

保護者

海外旅行へ行くと、日本では当たり前のように存在するものがなかったりします。そういうことで、日本のすばらしさを再認識することもありますよね。

保護者

確かに、そうした視点は大事よね。それに、日本の文化について正しく説明できるかどうかも大切だと思うの。この前、私も外国人のお友だちに日本の歴史について尋ねられたのだけど、答えられなくて恥ずかしい思いをしたわ。

教室長

ホームステイ先では、日本人を代表して、日本の文化や歴史を紹介する場面も多くあります。ひな祭りや七夕などの年中行事、忍者や武士のこと、日本の映画やTVのこと、漢字やひらがな・カタカナの成り立ちなどを、自分なりに説明できることが語学力以上に重要なことになってくると思います。

保護者

日本人が海外へ行くTV番組などを見ていると、和食を作ってあげたり、折り紙を追ってあげたりといったことも、現地の人に喜ばれるコミュニケーションの1つのようですね。

ホームステイに行く前から、身近な日本文化について親子で確認し合うのもいいかもしれないですね。

保護者

事前に知識を増やすことも大切ですが、気持ちや態度がより重要なのかもしれませんね。

教室長

確かに、あれこれ思い悩んでいるうちに中学・高校の6年間というのはあっという間に過ぎ去ってしまいますからね。アメリカなどの欧米圏では、大学生になると保護者の元を離れて学生寮に入って生活することも多いようです。ホームステイを通じて、親元を離れて暮らす経験を積むという考え方でもよいでしょう。

保護者

不安が先行していたのですが、やはりうちの娘にもホームステイさせることを検討してみますね。

教室長

外国語のスキルが向上するのはもちろんですが、多感な中学生や高校生の時期に海外の文化に触れることは、人格形成においても有意義なことだと思います。日本の教育、特に進学校においては、校風や偏差値によって家庭環境が似通ってきてしまいますよね。人種、民族、宗教といった文化の多様性に触れることで、多角的に物事を見られるようになるでしょう。これからの日本を支えるお子さんたちには、こうしたグローバルな思考に触れることが非常に大切になってくると思います。機会があれば、ぜひお子さんにホームステイを経験させてあげてくださいね。

(※)参照:『国際バカロレアとは』(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/