平成26年から始まった「スーパーグローバルハイスクール(略称:SGH)」制度。平成28年度までに全国で高等学校など123校がSGH指定校に選ばれています。国際的に活躍できる人材の育成を目指すSGHとは、どんな取り組みをしている学校なのでしょうか?
目次
スーパーグローバルハイスクールとは?
保護者
志望校を選ぶために調べていたら、「SGHに指定されました」という高校があったのだけどSGHって何のことですか?
教室長
SGHは「スーパーグローバルハイスクール」の略称ですね。平成26年から始まった、国際的に活躍できる人材の育成に力を入れている学校を文部科学省が指定する制度のことです。
保護者
インターネットのおかげで、地球の裏側にいる人ともリアルタイムで話せる時代ですものね。国際的な人材というのはこれからもっと必要になるんでしょうね。
教室長
文部科学省ではSGHの目的として「急速にグローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身につけ、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成する」(※1)としています。
保護者
社会課題というと環境、エネルギー、食糧、難民といった世界的な問題のことですよね?
保護者
そうした世界的な課題を学ぶだけでなく、解決するコミュニケーション能力や問題に対処する力を身につけるのが目的ということかしら。
教室長
そのとおりです。
保護者
グローバル・リーダーってどんな人のことなんでしょう?
教室長
文部科学省が公開している「平成28年度スーパーグローバルハイスクール概要」(※2)によると、「国際機関の職員、グローバル企業の経営者、政治家、研究者、社会起業家」などが挙げられいます。
保護者
SGHの目的がイメージできてきました。
SGH指定校にはどんな学校があるの?
保護者
それでSGHにはどんな学校が指定されているんですか?
教室長
平成26年度から28年度までにSGHに指定された学校は123校あります。内訳をみると、国立は12校、公立は73校、私立は38校となっています。
保護者
やっぱり偏差値の高い高校や英語教育に力を入れている高校ばかりなんでしょうね。
教室長
実は2016年時点では、都立高校が一校も含まれていないんですよ。
保護者
東京の公立高校が選ばれていないなんて、とても意外です。
教室長
そうですね。全国的には当然のことながら公立のいわゆるトップ校も選ばれていますが、地域や学区内でトップ校に次ぐ高校も指定校に入っています。逆にトップ校で落選した高校も多いそうです。
保護者
学力の高さだけでは選ばれなかったということでしょうか。
教室長
そうなんです。指定校には文部科学省が指定する英語教育に特化したスーパーイングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)に指定されていた高校も含まれますが、理科・数学分野の教育を重点的に行うスーパーサイエンスハイスクール(SSH)もSGHに選ばれていたりします。
保護者
国際的というと国際バカロレア(IB)も話題になりましたけど…。
保護者
日本の高校で海外の大学の入学資格を得られるんでしたよね。
教室長
そうです。国際バカロレアとは世界的な視野を持った人材を育成するための国際的教育プログラムのことですが、IB認定校もSGHに選ばれています。
保護者
英語力だけなく、いろいろな特性を持つ学校が選ばれているんですね。
教室長
私立でも難関校だけではなく、以前から国際教育やグローバル教育を特色とした学校が選ばれているようです。
保護者
それぞれの学校ではどんな取り組みをしているの?
教室長
SGHは研究開発校に位置づけられるのも特長の1つです。現行の学習指導要領などの基準によらない教育プログラムを編成し、実践することができます。
保護者
SGH指定校では具体的にどんな取り組みがされているんですか?
教室長
英語などによるグループワークやディスカッション、プロジェクト型学習、論文制作などが取り入れられています。また、帰国子女や外国人の生徒さんの積極的な受け入れや海外研修、大学と連携した英語で授業ができる教員の派遣なども実施されています。
保護者
語学力の経験を積むのはもちろんだけど、一般の高校では得られないような多様な体験ができるのね。ただ先生の話を聞いてノートを取るだけではなくて、生徒さん自身がさまざまな体験を通して学んでいくんですね。
教室長
たとえば、SGH指定校の同志社国際高等学校(京都)では「持続可能な社会を担うグローバル人材育成プログラム~環境先進国に学び世界に提言~」という構想名のもと、海外の提携校の生徒さんと課題を共有してディベート(討論)形式のディスカッションを行ったり、オーストリアやドイツでのフィールドワークを行ったりしています。これはこの高校の活動のほんの一部ですが、SGHの取り組みがイメージしやすいかもしれません。
保護者
持続可能な社会というと限られた資源やエネルギーの問題を考えるのかしら。それで環境先進国のオーストリアやドイツに行くのね。
教室長
文部科学省の「平成28年度スーパーグローバルハイスクール指定校一覧」(※3)によると、他の指定校の構想名には、宮城県立気仙沼高等学校(県立)では「海を素材とするグローバルリテラシー育成~東日本大震災を乗り越える人材をめざして~」、埼玉県立浦和第一女子高等学校では「未来のための『女性学』探究プロジェクト」などがあります。
保護者
構想名だけを見てもバラエティ豊かですね!
教室長
SGH全体の目的は「グローバル・リーダーの育成」ですが、学校ごとにさまざまなアプローチや教育プログラムがあります。各校の取り組みには地域性や学校独自のテーマが出ていて興味深いですよ。
保護者
普通の「高校」っていうイメージとずいぶん違う感じがします。
教室長
SGHの指定は原則として5年間で、その間に実験的・先進的な取り組みをすることになっていますからね。反対にSGHとしての取り組みはその学校のすべてではないので、志望校として選ぶなら教育目標や教育方針もよく確認した上で検討されるとよいでしょう。
※この記事に掲載された内容は平成28年10月現在のものです。
■参照サイト
(※1) 平成28年度スーパーグローバルハイスクールの指定について(平成28年3月31日):文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/sgh/1368807.htm
(※2) 平成28年度スーパーグローバルハイスクール概要:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/sgh/__icsFiles/afieldfile/2016/03/31/1368807_01.pdf
(※3) 平成28年度スーパーグローバルハイスクール指定校一覧:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/sgh/__icsFiles/afieldfile/2016/03/31/1368807_12_2.pdf