学年が上がれば上がるほど、努力した分だけ必ず成績が上がるというわけにはいかなくなってきます。がんばっているのになかなか点数が上がらないという人は、勉強の非効率的な部分を見つけて改善していきましょう。
目次
ノートはきれいにとらなくてもOK
保護者
がんばったわりに成績が上がらないのって、能力が低いってことなのでしょうか。
教室長
個人の能力がまったく関係ないとは言いませんが、中学生くらいの学習なら、個人の能力よりも勉強の仕方のほうが大きいと思いますよ。
保護者
そうなんですか?
教室長
ええ。「がんばっているのに」というお子さんの多くは、学習方法に改善すべきポイントがたくさんあるものです。たとえば、すごく丁寧にノートを書くとか。
保護者
え? きれいなノートって、すごく憧れましたよ?
教室長
きれいなノートは、視覚的に整理されており記憶しやすいのでいいのですが、黒板を写すことに一生懸命になって先生の授業を聞き漏らしてしまうとか、見た目のきれいさに意識を取られて内容が頭に入らないとか、そういう状態になってしまうと意味がないんですよ。
保護者
そっか、きれいに書くことに意識がいってしまうのはダメなんですね。
教室長
そもそも、黒板を書き写す行為にはあまり意味がないんです。手書きでノートをとった学生と、黒板を写真に撮った学生との間に、学力の有意差は見られないという実験データもあるくらいですからね。(※1)
保護者
本当ですか?ノートをしっかり書きなさいって言われてきたのに…。
教室長
いまだに学校ではノートを丁寧に書く生徒を高く評価する傾向にありますし、ダメなことだとは言いません。「東大合格生のノート」(※2)が流行ったように、脳を整理するのが得意な人のノートは美しいことが多いですからね。ただ、“きれいにノートを書くこと”に意識が傾いて内容が入ってこないのは本末転倒です。同様に、漢字練習や単語練習などもやり方を間違ってしまっている人も多いようです。本当は書くことによって覚えるのが目的ですが、多くの人が「たくさん書くこと」や「きれいに書くこと」に意識が向いてしまっていて、がんばって書いているのにちっとも覚えていません。これも非効率的であると言えるでしょう。
「覚えたつもり」が積み重なっている
教室長
次に多いのは、「覚えたつもり」「できたつもり」で学習を終えてしまうパターンですね。
保護者
「勉強したはずなのに」なんてことは、私も経験があります。
教室長
人は基本的に忘れていく生き物ですから、一度「覚えた」「わかった」と思っても、時間が経つごとに忘れてしまいます。ですから、一度覚えたと思ったことでも、必ず反復学習をして記憶を定着させることが大切です。
保護者
テスト前に一夜漬け、なんていうのは論外ですね。
教室長
本来、テスト前には勉強ではなく休養をしっかり取って、ベストコンディションで臨むべきものですからね。毎日の反復練習で長期記憶に書き換えてテストに臨みたいものです。同様の理由で、「問題集をたくさん解く」ことで満足してしまう人も要注意です。たくさん問題を解けばがんばった気分になれますが、ただ解き進めていったのでは苦手は苦手のままです。それよりも、解けなかった問題をチェックして、何度も繰り返し同じ問題にあたった方が、高い学習効果が得られますよ。
苦手を着実に克服する工夫が必要
保護者
なんだか「せっかくがんばったのに」っていう勉強法はすごくたくさんあるんですね。
教室長
自己満足で終わってしまう学習は、ほかにもありますよ。たとえば、自分が得意な科目や単元ばかりを集中してやってしまい、本当にやるべき苦手な部分の勉強が不十分になってしまうというのは、よく見られるケースですね。
保護者
問題が解けると気分がいいから、できることばかりやってしまうんですね。
教室長
そうですね。楽しく勉強するには好きなことを伸ばすことも大切ですが、テストで点数をとりたいならそれではいけません。苦手なところを知り、それを克服することこそ、本当の意味で「学習する」と言えます。
保護者
そもそも、うちの子は「苦手なところがどこか」ということもわかっていないかもしれません。
教室長
実は、そういうお子さんは少なくないんですよ。苦手を把握するためには、問題の難度を少しずつ上げながら解いていくことが効果的です。レベル1ができたらいきなりレベル5の問題に取り組むのではなくて、1・2・3・4・5と段階的に上げていくんです。そうすると、「1はできたのに5はできない」ではなくて、「3でつまずいた」ということが明確にわかります。これがわかれば、自然と何を克服すべきかが明確に見えてきますから、学習も楽になるでしょう。
保護者
確かに、できない原因がわからないと手も足も出ないものね。
教室長
そうなんです。でも、これから学習しようというお子さんが、自分で問題のレベルを把握することは難しいですよね。そこで大人の力が必要になるわけです。特に個別指導塾なら、1人ひとりの状態を的確に把握し、クラス全員ではなくてその子に合ったレベル設定をしてくれます。点数に伸び悩んでいるなら、一度力を借りてみてはいかがでしょうか?
保護者
なるほどね。さっそく子どもと相談してみようと思います。
参照:(※1)スマートフォンのカメラ機能とノートテイキングの学習効果に関する比較研究 白鷗大学 赤堀侃司(4.結論と考察/64ページ)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009912360
参照:(※2)太田あや 『東大合格生のノートはかならず美しい』文藝春秋 2008年